高度プロフェッショナル制度とは
高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)は、2019年4月1日に施行された働き方改革関連法により創設された、労働基準法第41条の2に基づく制度です。高度の専門的知識等を有し、職務範囲が明確で一定水準以上の年収を得ている労働者を対象に、本人同意等を要件として、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定の適用を除外する仕組みです。
裁量労働制とは異なり、労働時間規制そのものが適用除外となる点が大きな特徴です。一方で、長時間労働を防止するための健康確保措置が法定されています。
高プロ制度の主な要件
- 労使委員会で委員の5分の4以上の多数による決議を行うこと
- 決議を所轄労働基準監督署長に届け出ること
- 対象労働者の書面による同意を得ること
- 年収1,075万円以上の見込みであること(労働基準法施行規則第34条の2第6項)
- 対象業務に従事させること
- 4つの健康確保措置を実施すること
対象業務
労働基準法施行規則第34条の2第3項により、対象業務は以下の5つに限定されています。「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務」と定められています。
- 金融商品の開発業務
- 金融商品のディーリング業務(資産運用業務)
- アナリスト業務(有価証券市場の分析・評価)
- コンサルタント業務(事業・業務の企画運営に関する助言)
- 研究開発業務(新たな技術・商品・役務の研究開発)
これら以外の業務、たとえば営業職や一般的な管理職、システムエンジニアの保守業務などは対象になりません。
年収要件
対象労働者は、使用者との書面契約により職務範囲が明確に定められ、1年間あたりの賃金額が「基準年間平均給与額(毎月勤労統計調査の労働者1人当たり平均給与額の3倍の額)を相当程度上回る水準」であることが必要です。具体的には、労働基準法施行規則で1,075万円と定められています。
この金額には、確実に支払われることが見込まれる賃金(基本給・固定的手当・確実に支給される賞与等)が含まれます。業績連動型の不確定な賞与は含まれません。
健康確保措置
使用者は、長時間労働による健康障害を防止するため、以下の措置を労使委員会の決議で定め、実施する必要があります。
1. 健康管理時間の把握(必須)
事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間との合計を、客観的方法(タイムカード、PCログ等)で把握する必要があります。
2. 休日確保措置(必須)
対象労働者に、1年間を通じ104日以上、かつ4週間を通じ4日以上の休日を与えることが義務づけられています。
3. 選択的措置(次のいずれか1つを必ず実施)
- 勤務間インターバル:11時間以上の継続休息+深夜業(22時〜翌5時)の回数を1ヶ月4回以内に制限
- 健康管理時間の上限措置:1週40時間を超える時間について、1ヶ月100時間以内、または3ヶ月240時間以内
- 連続2週間の休日:1年に1回以上の連続2週間の休日(本人請求の場合は連続1週間×2回以上)
- 臨時の健康診断:1週40時間超の健康管理時間が1ヶ月80時間を超えた場合、または本人申出時に実施
4. 健康・福祉確保措置(決議で定める)
医師による面接指導、代償休日・特別休暇の付与、健康診断の実施、心とからだの健康問題に関する相談窓口の設置などから決議で定めて実施します。
導入手続き
- 労使委員会の設置:労使同数で構成し、労働者側委員は過半数労働組合または過半数代表者が指名
- 労使委員会の決議:委員の5分の4以上の多数による決議で、対象業務、対象労働者の範囲、健康確保措置等を定める
- 所轄労働基準監督署長への決議届出:「高度プロフェッショナル制度に関する決議届」を提出
- 対象労働者の書面同意:制度の概要、適用期間、同意撤回の手続き等を説明したうえで取得
- 就業規則等の整備:対象業務・対象労働者・賃金等を就業規則に明記
- 定期報告:6ヶ月以内ごとに健康管理時間の状況等を所轄労基署に報告
適用除外と同意撤回
- 対象労働者は、書面によりいつでも同意を撤回することができる
- 同意撤回の場合、撤回した時点から労働時間規制が再び適用される
- 同意撤回を理由とする解雇その他不利益取扱いは禁止
- 年収要件を満たさなくなった場合、対象業務に従事しなくなった場合も適用解除
まとめ
高度プロフェッショナル制度は、専門性の高い業務に従事する一部の労働者に対して、時間ではなく成果で評価する働き方を可能にする制度です。一方で、健康確保措置や手続要件は厳格であり、形骸化させないための運用体制構築が不可欠です。
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