母性健康管理措置とは
母性健康管理措置とは、妊娠中および出産後の女性労働者が、健康を保ちながら安心して働き続けられるよう、事業主に配慮を義務づける制度です。男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)の第12条・第13条に根拠があり、妊産婦(妊娠中および産後1年を経過しない女性)が対象となります。
少子化が進むなか、働きながら出産・育児に臨む女性を支えることは、企業にとっても人材確保の観点から欠かせません。法律の内容を正しく理解し、適切に運用することが求められます。
均等法が定める2つの措置
- 第12条:事業主は、女性労働者が保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければならない
- 第13条:保健指導・健康診査に基づく医師等の指導事項を守れるよう、勤務時間の変更や勤務の軽減など必要な措置を講じなければならない
保健指導・健康診査を受ける時間の確保
第12条に基づき、事業主は妊産婦が母子保健法による健康診査などを受けるための時間を確保しなければなりません。受診のために必要な時間としては、妊娠週数に応じた回数(例:妊娠23週までは4週間に1回など)が目安とされています。この時間を有給とするか無給とするかは法律上の定めがなく、各企業の判断に委ねられていますが、取得しやすい環境を整えることが望まれます。
母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)
母性健康管理措置を円滑に進めるための重要なツールが、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)です。これは、主治医等が行った指導の内容を、女性労働者から事業主へ的確に伝えるためのカードで、男女雇用機会均等法第13条に基づき厚生労働省が様式を定めています。母子健康手帳にも様式が掲載されています。
事業主は、母健連絡カードが提出された場合、その記載内容に応じて第13条に基づく適切な措置を講じる義務があります。医師の指導に基づく措置としては、勤務時間の短縮、休憩回数の増加、通勤緩和(時差出勤)、作業の制限・転換などが挙げられます。
労働基準法による母性保護規定
均等法とあわせて、労働基準法も妊産婦を手厚く保護しています。主な規定は次のとおりです。
- 第64条の3(危険有害業務の就業制限):妊産婦を、重量物を取り扱う業務や有害ガスを発散する場所での業務など、妊娠・出産・哺育に有害な業務に就かせてはならない
- 第65条(産前産後休業・軽易業務転換):産前は本人の請求により6週間(多胎妊娠は14週間)、産後は8週間の休業(産後6週間経過後に本人が請求し医師が支障なしと認めた業務は就業可)。妊娠中の女性が請求した場合は軽易な業務へ転換させる
- 第66条(妊産婦の時間外労働等の制限):妊産婦が請求した場合、時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはならない。変形労働時間制でも法定労働時間を超えて働かせない
- 第67条(育児時間):生後満1年に達しない子を育てる女性は、休憩時間とは別に1日2回、各30分以上の育児時間を請求できる
実務上のポイント
- 母健連絡カードが提出されたら、記載内容に沿った措置を必ず講じる
- 第64条の3・第65条・第66条・第67条は、本人の請求を要件とするものが多いため、制度の周知が重要
- 妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いは均等法で禁止されており、措置を講じたことと混同しないよう注意する
新型コロナウイルス感染症に関する特例
2021年(令和3年)には、新型コロナウイルス感染症への不安やストレスが母体や胎児の健康に影響するおそれがある場合に、医師等の指導に基づき作業の制限や在宅勤務、休業などの措置を講じることを事業主に義務づける特例措置が設けられました。母健連絡カードにも感染症対応の様式が追加されるなど、状況に応じた配慮が求められた事例です。今後も社会情勢に応じた対応が必要になることを念頭に置いておくとよいでしょう。
まとめ
母性健康管理措置は、男女雇用機会均等法と労働基準法が連携して妊産婦を守る制度です。母健連絡カードを軸に、医師の指導内容に応じた勤務時間の変更や負担軽減を確実に行うことが、法令遵守と従業員の安心の両方につながります。
当法人では、母性健康管理に関する社内規程の整備、母健連絡カードへの対応フロー構築、産前産後休業の手続きまで一貫して支援いたします。お気軽にご相談ください。