カスタマーハラスメントとは
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先などからの著しい迷惑行為(暴言、暴力、不当な要求等)を指します。厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、おおむね以下のように整理されています。
- 顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合
- 要求の内容が妥当でも、要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当でない場合
- 当該行為により労働者の就業環境が害されるもの
法的位置づけと最新動向
労働施策総合推進法とパワハラ指針
2020年6月施行(中小企業は2022年4月)の改正労働施策総合推進法に基づくパワハラ指針では、事業主が「他の事業主の雇用する労働者等からの言動」「顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)」に関し、相談体制の整備や被害者への配慮、被害防止のための取組を行うことが「望ましい取組」として示されました。
法改正による義務化(2026年10月施行)
2025年6月、改正労働施策総合推進法(いわゆる「カスハラ対策法」)が成立し、2026年10月1日から事業主のカスタマーハラスメント防止措置が義務化されます。事業主は、労働者からの相談に応じ適切に対応するための体制整備、カスハラ抑止のための措置その他雇用管理上必要な措置を講じることが法的義務となります。
厚生労働省は2026年2月に同法に基づく「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」を公表しており、対象企業は施行に向けた準備が急務です。先行して東京都では、全国初の「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が2025年4月に施行されました。北海道・群馬県・三重県など、独自条例の制定も全国で進んでいます。
カスハラの主な行為類型
- 身体的な攻撃(暴行、傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
- 威圧的な言動(怒鳴る、長時間の拘束)
- 土下座の要求
- 継続的・執拗な言動(同じクレームの繰り返し)
- 差別的な言動、性的な言動
- 従業員個人への攻撃、SNS等での誹謗中傷
- 過剰なサービス要求、金銭補償の不当要求
企業が講じるべき対策
1. 基本方針の明確化と社内周知
「カスハラから従業員を守る」という経営トップの方針を明確化し、社内に周知します。安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点からも、企業として従業員を守る姿勢を示すことが重要です。
2. 対応マニュアル・対応フローの整備
- カスハラに該当する行為の判断基準
- 初期対応・エスカレーション基準
- 複数名対応・録音・録画の運用ルール
- 悪質事案の警察通報・弁護士相談フロー
- 被害従業員へのフォロー(業務シフト調整、産業医面談等)
3. 相談窓口の設置
パワハラ・セクハラ相談窓口と一体化して、カスハラ被害を相談できる窓口を設置します。社外相談窓口の活用も有効です。
4. 従業員研修の実施
カスハラの定義、初動対応、エスカレーション基準、自身の心身を守る方法について、定期的な研修を実施します。特に接客部門・コールセンター・営業部門は重点対象です。
5. 就業規則・服務規律への反映
従業員がカスハラに毅然と対応できる根拠として、以下のような事項を就業規則・対応マニュアルに明示します。
- 従業員はカスハラに対してサービス提供を中止できる
- 悪質事案については上長・本社が引き継ぐ
- 暴言・暴行があった場合は警察に通報する場合がある
厚労省マニュアルが推奨する事前準備
- 判断基準・対応マニュアルの整備
- 相談・対応体制の構築(窓口担当者の選任、担当者向け研修)
- 従業員への教育・周知
- 事案発生時の被害者ケア体制(産業医・カウンセラー連携)
- 顧客への啓発(「お客様への対応方針」の店頭掲示・HP公表)
カスハラ事案が発生した場合の対応
- 初期対応:複数名対応、録音、上長報告
- 事実確認:客観的記録(防犯カメラ、録音、メモ)の保全
- 対応判断:マニュアルに基づき謝罪/対応中止/警察通報を判断
- 被害従業員のケア:業務シフト調整、産業医・EAP(従業員支援プログラム)面談
- 記録と再発防止:事案を記録し、社内で共有・対応マニュアルに反映
まとめ
カスタマーハラスメント対策は、従業員の心身を守り、離職防止・人材確保の観点からも経営課題となっています。2026年10月の法施行を見据え、対応マニュアル・相談窓口・従業員研修の3点セットを早急に整備することが重要です。
当法人では、カスハラ対応マニュアルの作成、就業規則への反映、従業員研修の実施まで一貫してサポートいたします。お気軽にご相談ください。