結論:男女雇用機会均等法は、募集・採用から配置・昇進・退職・解雇まで、性別を理由とする差別を禁止しています。ただし、芸術・芸能や防犯上の必要がある職務、女性が少ない職場での女性優遇(ポジティブ・アクション)などは例外として違反になりません。身長・体重や転居を伴う転勤を要件にする「間接差別」にも注意が必要です。
男女雇用機会均等法の目的
男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、雇用の分野における男女の均等な機会と待遇を確保し、女性労働者の就業に関して妊娠中・出産後の健康を守ることを目的とする法律です。職場での性別による差別をなくし、誰もが能力を発揮できる環境を整えるための基盤となります。
事業主には、差別の禁止だけでなく、ハラスメントを防止する措置義務など、積極的な取り組みが求められています。ここでは企業が押さえておくべき主要なポイントを整理します。
禁止される性別を理由とする差別(第5条・第6条)
- 募集・採用(第5条)における性別を理由とする差別の禁止
- 配置・昇進・降格・教育訓練・福利厚生・職種や雇用形態の変更・退職勧奨・定年・解雇・労働契約の更新(第6条)における性別を理由とする差別の禁止
間接差別の禁止
性別を直接の理由としていなくても、結果として一方の性に不利益を与える基準は「間接差別」として禁止されています。2007年(平成19年)の改正で導入された考え方で、合理的な理由がない場合は違法となります。
均等法施行規則(均等則)第2条では、間接差別となるおそれがある措置として、次の3つが定められています。
- 募集・採用にあたり、身長・体重・体力を要件とすること
- 募集・採用、昇進、職種の変更にあたり、転居を伴う転勤に応じられることを要件とすること
- 昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とすること
これらは、業務上の必要性など合理的な理由がない限り、間接差別として認められません。
違反にならない例外
性別で異なる取扱いをしても、次の場合は法違反にならないとされています(法第8条、厚生労働省「性差別禁止指針」第2の14)。
例外として認められる主なケース
- ポジティブ・アクション:女性が相当程度少ない職種・役職で、女性を優先して募集・採用・登用するなど、格差を解消するための措置(法第8条)
- 職務の性質上、一方の性に限る必要がある場合:芸術・芸能の表現の真実性(俳優・歌手・モデルなど)、防犯上の要請から男性に従事させる必要がある守衛・警備員の職務、宗教上・風紀上・スポーツ競技の性質上これらと同程度の必要がある職務
- 法令上の制限がある場合:労働基準法の女性の就業制限(坑内業務・危険有害業務)や、保健師助産師看護師法の規定により、一方の性を就かせることができない場合
- 特別な事情がある場合:風俗・風習の違いにより一方の性が能力を発揮しがたい海外勤務など
なお、警備の仕事であれば何でも例外になるわけではありません。受付や出入者の確認だけで防犯が本来の目的でない職務は、例外に当たらないとされています。募集広告で「男性のみ」「女性歓迎」のように一方の性を排除・優先する表現は、上の例外に当たらない限り違反となるため、求人票の文言には注意が必要です。
婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(第9条)
第9条は、女性労働者の婚姻・妊娠・出産を退職理由として定めることや、婚姻を理由に解雇することを禁止しています。さらに、妊娠・出産、産前産後休業の請求・取得などを理由とする解雇その他の不利益な取扱いも禁止されています。
とりわけ、妊娠中および産後1年を経過しない女性に対する解雇は無効とされ、事業主がその解雇が妊娠等を理由とするものでないことを証明しない限り、覆りません。いわゆるマタニティハラスメント対策の根幹をなす規定です。
ハラスメント防止措置義務
- 第11条:職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、相談体制の整備など雇用管理上必要な措置を講じる義務
- 第13条:就職活動中の学生など求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するため、必要な措置を講じる義務(2026年10月1日施行の改正で新設)
- 第15条:職場における妊娠・出産等に関するハラスメント(マタニティハラスメント)を防止するため、必要な措置を講じる義務(改正前の第11条の3)
- 相談したことや事実を述べたことを理由とする不利益取扱いも禁止
ポジティブアクション
男女雇用機会均等法は、過去の慣行などにより男女間に事実上の格差が生じている場合、その格差を解消するための企業の自主的な取り組み(ポジティブアクション)を認めています。たとえば、女性の少ない職種で女性を積極的に登用することなどが該当します。これは性別による差別の例外として位置づけられ、国も助言や援助を行うことができます。実質的な男女平等を実現するための前向きな取り組みとして推奨されています。
紛争解決の援助と調停
均等法に関する労使間のトラブルが生じた場合には、行政による解決支援の仕組みが用意されています。都道府県労働局長は、当事者からの求めに応じて必要な助言・指導・勧告を行うことができます。また、当事者の申請に基づき、紛争調整委員会による調停を利用することも可能です。これらは裁判によらず、迅速かつ円満に問題を解決する手段として活用されています。
まとめ
男女雇用機会均等法は、性別による差別の禁止、間接差別の禁止、妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止、ハラスメント防止措置義務など、企業が守るべき多くのルールを定めています。これらを正しく理解し、就業規則や社内体制に反映させることが、コンプライアンスと働きやすい職場づくりの第一歩です。
こんなときは、ご相談ください
- 求人票や募集要項の表現が、均等法に違反していないか確認したい
- 2026年10月の改正(求職者等へのセクハラ防止)に合わせて、採用面接やインターンの対応ルールを整えたい
- 就業規則・ハラスメント防止規程を、改正後の条文に合わせて見直したい
当法人では、就業規則・ハラスメント防止規程の整備から、社内研修まで支援しています。顧問契約を結ばずに、必要な業務だけをスポットでご依頼いただくことも可能です。お見積りと初回のご相談は無料です。