年金制度改正法の成立
2025年(令和7年)、社会経済の変化を踏まえて年金制度の機能を強化するための法律(年金制度改正法)が成立し、令和7年法律第74号として公布されました。少子高齢化や働き方の多様化を背景に、より多くの人が被用者保険でカバーされ、働きながら年金を受け取りやすい仕組みへの転換を図る内容となっています。
改正項目は多岐にわたり、施行時期も項目ごとに段階的に設定されています。ここでは企業実務に関わりの深いポイントを中心に解説します。なお、政省令で詳細が定められる事項も多いため、最新情報は厚生労働省・日本年金機構の公表資料をご確認ください。
2025年改正の主なポイント
- 短時間労働者への被用者保険の適用拡大(企業規模要件の段階的撤廃・賃金要件の見直し)
- 在職老齢年金制度の支給停止基準額の引上げ
- 標準報酬月額の上限の引上げ
- 遺族年金の見直し
- iDeCo・確定拠出年金(DC)に関する改正
被用者保険の適用拡大
短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用について、これまで段階的に引き下げられてきた企業規模要件(被保険者数による要件)を段階的に撤廃する方針が示されました。あわせて、月額8.8万円以上という賃金要件についても見直しが行われ、いわゆる「年収の壁(106万円の壁)」の解消が図られます。
これにより、最終的には「週の所定労働時間が20時間以上」であることなどを軸とした基準で適用判定が行われる方向となります。企業規模要件の撤廃は2027年(令和9年)10月以降、段階的に進められる見込みです。具体的な施行スケジュールや経過措置については、今後の政省令・公表資料で確認が必要です。
在職老齢年金制度の見直し
在職老齢年金は、60歳以降に働きながら老齢厚生年金を受け取る場合に、賃金(総報酬月額相当額)と年金月額の合計が一定基準を超えると年金の一部または全部が支給停止される仕組みです。高齢者の就労意欲を阻害しないよう、この支給停止の基準額(支給停止調整額)が引き上げられます。
支給停止の基準額(支給停止調整額)は、改正前の基準額(令和6年度50万円・令和7年度51万円)を基礎に引き上げられ、2026年(令和8年)4月以降に新しい基準額が適用される予定です。基準額は賃金・物価の変動に応じて毎年度改定されるため、適用時点の正確な金額は厚生労働省・日本年金機構の最新公表値を必ずご確認ください。基準額の引上げにより、働きながらでも年金が支給停止されにくくなります。
標準報酬月額の上限引上げ
厚生年金保険の標準報酬月額には上限が設けられていますが、高所得者の保険料負担と年金給付の対応関係を改善する観点から、この上限が段階的に引き上げられます。上限引上げにより、上限付近の高所得者は保険料負担が増える一方、将来の年金額にも反映されます。具体的な等級・金額および施行時期は政省令で定められるため、最新情報をご確認ください。
遺族年金・確定拠出年金の見直し
- 遺族年金の見直し:子のいない配偶者に対する遺族厚生年金について、男女差の解消や有期給付化などを含む見直しが行われます。経過措置が設けられるため、対象者・施行時期の確認が重要です。
- iDeCo・確定拠出年金(DC)の改正:加入可能年齢や拠出限度額に関する見直しが含まれます。私的年金を活用した老後資産形成を後押しする内容です。
企業・実務上の留意点
- 適用拡大により、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者が増える可能性がある
- 加入対象者の増加は、事業主の保険料負担や雇用契約・働き方の設計に影響する
- 施行時期が項目ごとに異なり、政省令で詳細が定まる事項も多いため、最新情報の継続的な確認が必要
まとめ
2025年成立の年金制度改正法は、被用者保険の適用拡大、在職老齢年金の支給停止基準額の引上げ、標準報酬月額の上限引上げ、遺族年金やiDeCoの見直しなど、幅広い改正を含んでいます。多くの項目が段階的に施行され、詳細は政省令に委ねられているため、施行時期と内容を継続的に確認することが大切です。
当法人では、適用拡大に伴う加入手続きや働き方の見直し、社会保険全般のご相談に対応いたします。お気軽にご相談ください。