入社時に必要な手続きの全体像
従業員を新たに雇い入れたとき、事業主には社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)に関する各種の加入手続きが求められます。これらは提出先も提出期限も異なるため、入社日が決まった段階で漏れなく段取りしておくことが重要です。
特に社会保険と雇用保険は、加入要件を満たす従業員については事業主に加入させる義務があり、手続きを怠ると従業員本人の保険給付や年金記録に不利益が生じます。まずは全体像を押さえておきましょう。
入社時の主な手続きと提出先・期限
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届:年金事務所(事務センター)へ、雇用した日から5日以内
- 雇用保険 被保険者資格取得届:ハローワークへ、被保険者となった日の属する月の翌月10日まで
- 健康保険 被扶養者(異動)届:扶養家族がいる場合に資格取得届と併せて提出
- 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿:労働基準法上の法定三帳簿として整備
健康保険・厚生年金保険の資格取得届
健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届は、従業員を雇用した日から5日以内に、管轄の年金事務所(協会けんぽ加入事業所の場合)へ提出します。健康保険組合に加入している事業所では、厚生年金保険は年金事務所へ、健康保険は各健康保険組合へそれぞれ提出します。
この届出により、従業員の標準報酬月額が決定され、以後の保険料や将来の年金額の基礎となります。届出には従業員のマイナンバーまたは基礎年金番号の記載が必要です。
加入対象となる従業員
正社員はもちろん、一定の要件を満たすパート・アルバイトも加入対象となります。判断に迷う場合は、労働時間や契約内容を確認したうえで加入の要否を検討します。
短時間労働者の適用拡大
パート・アルバイトなどの短時間労働者についても、以下の要件をすべて満たす場合は社会保険への加入が必要です(特定適用事業所に勤務している場合)。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収換算で約106万円)
- 雇用期間が2か月を超える見込み
- 学生でないこと
なお、月額8.8万円以上とする賃金要件(いわゆる「106万円の壁」)は、2026年10月以降に撤廃される予定です。撤廃後は「週20時間以上」「2か月超の雇用見込み」「学生でないこと」の要件を満たせば、賃金額にかかわらず加入対象となります。今後さらに企業規模要件も段階的に縮小されるため、パートを多く雇用する事業所は最新の基準を確認しておく必要があります。
雇用保険の資格取得届
雇用保険の被保険者資格取得届は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに、事業所を管轄するハローワークへ提出します。たとえば4月15日入社の場合、提出期限は5月10日です。
雇用保険は、原則として「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」従業員が加入対象です。郵送で提出する場合は、消印日ではなくハローワークの到着日が提出日として扱われる点に注意しましょう。
被扶養者がいる場合の手続き
従業員に配偶者や子など、健康保険上の扶養に入れる家族がいる場合は、資格取得届と併せて健康保険被扶養者(異動)届を提出します。配偶者が国民年金第3号被保険者に該当する場合は、この届出により第3号被保険者の手続きも同時に行われます。
被扶養者の認定には収入要件などがあり、続柄や収入を確認できる書類の添付を求められることがあります。
入社時に本人から回収する主な情報・書類
- マイナンバー(本人・被扶養者分)
- 基礎年金番号(年金手帳・基礎年金番号通知書等で確認)
- 雇用保険被保険者番号(前職がある場合)
- 被扶養者の続柄・収入を確認できる書類(扶養手続きがある場合)
- 給与振込先などの基本情報
電子申請と法定帳簿の整備
これらの届出は、窓口・郵送のほか、e-Gov電子申請やGビズID、届書作成プログラムを利用した電子申請でも提出できます。入退社が多い事業所では、電子申請を活用することで手続きの正確性とスピードが大きく向上します。
また、従業員を雇い入れたら、労働基準法上の労働者名簿を作成する必要があります。労働者名簿には氏名・生年月日・雇入年月日・従事する業務の種類などを記載し、賃金台帳・出勤簿と併せて法定三帳簿として整備・保存します。
まとめ
入社時の手続きは、提出先(年金事務所・ハローワーク)と提出期限(5日以内・翌月10日まで)が異なるうえ、扶養手続きやマイナンバーの取扱いなど確認事項も多岐にわたります。期限を過ぎると従業員の保険給付や年金記録に影響するため、正確かつ迅速な対応が欠かせません。
当法人では、入社手続きの必要書類のご案内から資格取得届・被扶養者異動届の作成・電子申請、労働者名簿など法定帳簿の整備まで一貫してサポートいたします。新規採用や手続き体制の見直しをお考えの際は、お気軽にご相談ください。