出産手当金は、産前産後休業で給与が支払われない期間の生活を支える健康保険の給付です。名前の似た出産育児一時金とは別の制度で、支給の考え方も金額も異なります。この記事では計算方法と手続きを整理します。
この記事の結論
- 支給額:支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 3分の2 × 日数
- 支給期間:出産日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産日後56日まで
- 対象:健康保険の被保険者本人(被扶養者は対象外)
- 別制度:出産育児一時金は「出産費用の補助」で、出産手当金とは別に支給される
出産手当金とは
出産手当金は、健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、給与が支払われないときに支給される給付です。健康保険法第102条に基づきます。
重要なのは、被保険者本人が対象という点です。配偶者の健康保険の被扶養者になっている方は、出産手当金を受け取れません(出産育児一時金は受け取れます)。
支給される期間
支給対象となるのは、次の期間のうち、実際に労務に服さなかった日です。
| 区分 | 期間 |
|---|---|
| 産前 | 出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日) |
| 産後 | 出産日後56日 |
出産日は産前の期間に含まれます。また、出産が予定日より遅れた場合、遅れた日数分も支給対象になります。逆に早まった場合は、その分産前の期間が短くなります。
なお、労働基準法第65条により、産後8週間(56日)は就業させてはならないとされています(産後6週間経過後に本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務には就かせることができます)。
支給額の計算方法
出産手当金の計算式
支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 3分の2 × 支給日数
計算の順番と、押さえるべき点は次のとおりです。
- 直近の月額ではなく12か月の平均を使います
- 被保険者期間が12か月に満たない場合は、加入期間の平均額と、保険者が定める標準報酬月額の平均額とを比べ、いずれか低い額を用います
- 30日で割った額(1円未満は四捨五入)に3分の2を掛けます(1円未満は四捨五入)
休業中に給与が支払われている場合、その額が出産手当金の日額より少ないときは差額が支給され、多いときは支給されません。
出産育児一時金との違い
| 出産手当金 | 出産育児一時金 | |
|---|---|---|
| 目的 | 休業中の所得補償 | 出産費用の補助 |
| 対象 | 被保険者本人のみ | 被保険者本人および被扶養者 |
| 金額 | 標準報酬日額の3分の2 × 日数 | 子1人につき定額(制度改定により変わるため最新額を確認) |
| 要件 | 休業して給与が支払われないこと | 妊娠4か月(85日)以上の出産 |
両者は併給できます。「一時金をもらったから手当金は出ない」ということはありません。
会社側の手続きと、あわせて行うこと
- 出産手当金支給申請書:被保険者・医師(助産師)・事業主がそれぞれ記入し、健康保険の保険者へ提出します。事業主欄には勤務状況と賃金支払状況を記載します
- 産前産後休業取得者申出書:年金事務所へ提出し、社会保険料の免除を受けます(被保険者・事業主とも免除)
- 育児休業へ移行する場合:産後56日経過後は育児休業となり、育児休業給付金と育休中の保険料免除の手続きに移ります
申請は産後にまとめて行うのが一般的です。時効は2年(労務に服さなかった日ごとにその翌日から起算)ですので、忘れずに手続きしてください。
よくある質問(FAQ)
退職しても出産手当金はもらえますか?
資格喪失日の前日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職時に出産手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も継続して受給できる場合があります。要件が細かいため個別にご確認ください。
産休中に給与を支払うとどうなりますか?
支払われた給与が出産手当金の日額より少ない場合は差額が支給され、多い場合は支給されません。給与を支払うかどうかは会社の定めによります。
産休中の社会保険料はどうなりますか?
産前産後休業取得者申出書を提出することで、被保険者・事業主の双方が免除されます。免除期間も被保険者資格は継続し、将来の年金額にも反映されます。
まとめ
産前産後から育児休業までは、健康保険・雇用保険・年金の手続きが連続して発生する場面です。提出先も期限も異なるため、漏れが起きやすい業務でもあります。当法人では、一連の手続きをまとめて代行し、規程の整備までご支援しています。担当者の負担が大きいとお感じでしたら、ぜひご相談ください。