退職金制度の意義
退職金制度は、長年勤続した従業員への功労報償としての性格と、退職後の生活保障としての性格を併せ持つ重要な人事制度です。法律上の支給義務はありませんが、就業規則または退職金規程に定めた場合は労働基準法第89条第3号の2に基づき賃金として取り扱われ、定めた基準に従って支払う義務が生じます。
採用競争力や離職防止の観点からも、自社に合った退職金制度を設計することは、中小企業経営の重要なテーマです。
主な退職金制度の種類
- 退職一時金制度:退職時に一括支給。社内積立または外部積立
- 確定給付企業年金(DB):将来の給付額を約束する企業年金
- 企業型確定拠出年金(企業型DC):拠出額を確定し、運用結果で給付額が決まる
- 中小企業退職金共済(中退共):独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する国の退職金制度
退職金の税制優遇
退職所得控除額の計算
退職金は所得税法上「退職所得」として扱われ、勤続年数に応じた退職所得控除が認められています。
- 勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます。
課税対象額の計算
退職所得は、他の所得と分離して課税され、さらに以下の式により課税対象額が計算されます。
- 課税退職所得金額 =(退職金等の収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
※勤続年数5年以下の役員等の退職金(特定役員退職手当等)および、勤続年数5年以下で退職所得控除額を超える300万円超部分(短期退職手当等)には1/2課税が適用されません。
中小企業退職金共済(中退共)
中退共は、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する、中小企業向けの国の退職金制度です。単独で退職金制度を持つことが難しい中小企業を支援するため、税制優遇や国の助成が設けられています。
制度の特徴
- 掛金月額は5,000円から30,000円まで16種類から選択(短時間労働者は2,000円・3,000円・4,000円も選択可)
- 掛金は事業主が全額負担し、全額損金(または必要経費)算入が可能
- 退職金は機構から従業員へ直接支給されるため、企業の事務負担が軽減
- 納付月数が11ヶ月以下の場合は退職金が支給されず、12ヶ月以上から支給開始
- 新規加入時には掛金月額の1/2(上限5,000円)を最大4ヶ月助成、月額変更時にも増額分の1/3を1年間助成(一定要件あり)
退職金額の決まり方
退職金額は、掛金月額と納付月数によって算出される「基本退職金」(予定運用利回り年1.0%で設計)に、運用収入の状況等に応じて支給される「付加退職金」を加えた金額となります。
退職金規程に必要な記載事項
- 適用される労働者の範囲
- 退職金の決定方法・計算方法(勤続年数別支給率、ポイント制等)
- 支払の方法(一時金・年金・併用)
- 支払の時期
- 不支給事由・減額事由(懲戒解雇時の取扱い等)
- 自己都合・会社都合による支給率の違い
制度設計のポイント
中小企業が退職金制度を導入する際は、財務状況・人員構成・採用戦略を踏まえ、以下の観点から検討することが重要です。
- 長期的な掛金負担のシミュレーション
- 外部積立(中退共・DC・DB)と社内積立のバランス
- 就業規則・退職金規程と整合した制度設計
- 従業員への制度説明と同意取得
まとめ
退職金制度は一度導入すると変更が難しく、不利益変更には合理的理由と手続が必要となります。中退共をはじめとする外部積立制度を活用することで、税制優遇を受けながら計画的に積立を進めることが可能です。
当法人では、退職金規程の整備、中退共・企業型DC等の導入支援、既存制度の見直しまで幅広く対応いたします。お気軽にご相談ください。