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労働者派遣法の基本|派遣先・派遣元の責任を整理

結論として、労働者派遣では「派遣元の義務」と「派遣先の義務」が法律で明確に分けられています。雇用契約を結ぶ派遣元は賃金支払・社会保険・派遣元管理台帳・就業条件明示・教育訓練・待遇情報の管理などを担い、実際に指揮命令する派遣先は労働時間管理・安全衛生・ハラスメント防止・派遣先管理台帳・抵触日通知などを担います。本記事では、派遣元の義務・派遣先の義務・両者の責任分担を、比較表とFAQで整理します。

労働者派遣法の概要

労働者派遣法(正式名称:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)は、派遣労働者の保護と派遣事業の適正な運営を目的とする法律です。派遣元事業主・派遣先・派遣労働者の三者間で雇用関係と指揮命令関係が分離するという特殊な労働形態のため、派遣元の義務・派遣先の義務それぞれを明確にするルールが定められています。

2015年の改正で派遣可能期間の制限が見直され、2020年4月には派遣労働者の同一労働同一賃金が施行されました。直近では待遇情報の提供・抵触日通知・キャリア形成支援など、派遣元・派遣先双方の義務が拡充されています。

派遣禁止業務

派遣法第4条により、次の業務は労働者派遣を行うことが禁止されています(適用除外業務)。

派遣可能期間の制限(3年ルール)

2015年9月30日施行の改正派遣法により、派遣可能期間は「事業所単位」と「個人単位」の2つの観点から制限されています。

事業所単位の期間制限(原則3年)

  • 派遣先の同一の事業所で派遣労働者を受け入れられる期間は原則3年が上限
  • 3年を超えて受け入れる場合は、抵触日の1ヶ月前までに派遣先事業所の過半数労働組合または過半数代表者に対して書面で意見聴取を実施する必要あり
  • 意見聴取記録は3年間保管し、事業所の労働者に周知
  • 延長を決定したら、速やかに派遣元事業主に新たな抵触日を書面で通知

個人単位の期間制限(3年)

  • 同一の派遣労働者を、派遣先の同一組織単位(いわゆる「課」など業務配分や指揮命令の単位)で受け入れられる期間は3年が上限
  • 事業所単位の期間延長を行っても、個人単位の3年は延長不可(組織単位を変えれば同一事業所で継続可能)

3年ルールの適用除外

次のいずれかに該当する派遣労働者は、3年ルールの対象外です。

抵触日通知と待遇情報の提供

派遣先は、労働者派遣契約の締結に先立ち、派遣元に対して事業所単位の抵触日を通知する義務があります。通知がなければ、派遣元は労働者派遣契約を締結することができません。

あわせて、派遣先は、比較対象労働者の賃金・待遇情報など「待遇に関する情報」を派遣元に提供する義務があります(派遣法第26条第7項)。

同一労働同一賃金(2020年4月施行)

2020年4月1日施行の改正派遣法により、派遣元事業主は、派遣労働者の待遇について、次のいずれかの方式を必ず選択し、公正な待遇を確保しなければなりません。

① 派遣先均等・均衡方式

派遣先の通常の労働者と職務内容・配置の変更範囲等が同一の場合は均等待遇、違いがある場合は均衡待遇を確保する方式。派遣先からの詳細な待遇情報提供が前提となります。

② 労使協定方式

派遣元の過半数労組または過半数代表者と労使協定を締結し、厚生労働省が毎年公表する「同種業務の一般労働者の平均的賃金額」と同等以上の賃金を支給する方式。実務上はこちらを採用する派遣元が多数を占めています。

派遣元の義務|派遣元が守るべき主な義務

派遣元事業主は、派遣労働者と雇用契約を結ぶ当事者として、労働者派遣法上さまざまな義務を負います。派遣元の義務を怠ると、労働局の指導・勧告・許可取消の対象となります。派遣元が守るべき主な義務は次のとおりです。

派遣元管理台帳の作成・記載・保存

派遣元事業主は、派遣労働者ごとに派遣元管理台帳を作成し、派遣先の名称・就業場所・業務内容・派遣期間・抵触日・教育訓練の内容・待遇の決定方式などを記載しなければなりません(派遣法第37条)。台帳は派遣終了日から3年間保存する義務があります。

就業条件の明示

派遣元は、労働者派遣を行うにあたり、あらかじめ派遣労働者に対して就業条件(業務内容、就業場所、指揮命令者、派遣期間、就業日・就業時間、抵触日など)を明示する義務があります(派遣法第34条)。書面・FAX・メール等で明確に伝える必要があります。

教育訓練・キャリアアップ支援

派遣元は、派遣労働者の段階的・体系的な教育訓練と、希望者へのキャリアコンサルティングを実施する義務があります(派遣法第30条の2)。この計画的な教育訓練の実施は、派遣事業の許可・更新の要件にもなっています。

待遇の確保(同一労働同一賃金)

派遣元は、前述の「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかにより、派遣労働者の公正な待遇を確保する義務があります。労使協定方式を採る場合は、協定の締結・周知・行政への報告が必要です。

その他の派遣元の義務

派遣先の義務|派遣先が守るべき主な義務

派遣先は、派遣労働者と雇用契約を結んでいなくても、実際に指揮命令を行う立場として労働者派遣法上の義務を負います。派遣先が守るべき主な義務は次のとおりです。

派遣先管理台帳の作成・記載・保存

派遣先は、派遣労働者ごとに派遣先管理台帳を作成し、派遣就業日・就業時間・従事した業務・苦情処理の状況・教育訓練の内容などを記載しなければなりません(派遣法第42条)。台帳は派遣終了日から3年間保存し、派遣元から求めがあれば就業実績を通知する義務があります。

事業所単位の抵触日通知

派遣先は、労働者派遣契約の締結に先立ち、派遣元に対して事業所単位の抵触日を書面等で通知する義務があります。通知がなければ派遣元は派遣契約を締結できません。

待遇に関する情報の提供

派遣先は、比較対象労働者の賃金・待遇情報など「待遇に関する情報」を派遣元に提供する義務があります(派遣法第26条第7項)。この情報提供がなければ、派遣元は同一労働同一賃金の対応ができません。

その他の派遣先の義務

派遣先・派遣元の責任分担【比較表】

労働法上の責任は、原則として雇用契約を結んでいる派遣元が負いますが、実際の指揮命令を行う派遣先にも一定の責任が課されています。派遣元の義務・派遣先の義務の主な分担を比較表で整理すると次のとおりです。

項目 派遣元の義務 派遣先の義務
雇用契約・賃金支払 ○(雇用主として負う)
社会保険・労働保険 ○(加入手続き)
管理台帳 ○ 派遣元管理台帳(3年保存) ○ 派遣先管理台帳(3年保存)
就業条件の明示 ○(派遣労働者へ明示)
教育訓練・キャリア支援 ○(計画的な教育訓練) △(業務に必要な訓練等の機会提供)
待遇情報 ○(待遇確保・方式の選択) ○(待遇情報の提供)
抵触日通知 ○(事業所単位の抵触日を通知)
労働時間・休憩・休日の管理 ○(実際の指揮命令者として)
安全衛生・危険防止 △(一般健康診断等) ○(現場の危険防止・一部健診)
ハラスメント防止・苦情処理

よくある質問(FAQ)

Q. 派遣先と派遣元、どちらが責任を負うのですか?

A. 原則として、雇用契約を結んでいる派遣元が賃金支払・社会保険・就業条件明示・待遇確保などの雇用主としての責任を負います。一方、実際に指揮命令を行う派遣先は、労働時間管理・安全衛生・ハラスメント防止・抵触日通知など、就業の現場に関わる責任を負います。安全衛生や待遇情報のように、派遣元・派遣先の双方が義務を負う項目もあるため、上記の比較表で分担を確認してください。

Q. 派遣元が守るべき義務にはどのようなものがありますか?

A. 派遣元の主な義務は、派遣元管理台帳の作成・3年保存、就業条件の明示、段階的・体系的な教育訓練とキャリアアップ支援、同一労働同一賃金(派遣先均等・均衡方式または労使協定方式)による待遇確保、社会保険・労働保険の加入、期間制限(3年ルール)の管理、マージン率等の情報公開などです。これらは派遣事業の許可・更新の要件にも直結するため、台帳整備と教育訓練の記録は特に重要です。

まとめ|派遣元の義務・派遣先の義務を正しく分担する

労働者派遣法は、3年ルール・同一労働同一賃金・抵触日通知・待遇情報提供・派遣元管理台帳・派遣先管理台帳など、派遣元の義務・派遣先の義務それぞれに細かなルールを課しています。違反した場合は労働局による指導・勧告・公表、さらには許可取消等の重いペナルティが科される可能性があります。責任分担を正しく理解し、台帳整備と手続きを漏れなく行うことが、派遣事業の適正運営の基本です。

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AUTHOR / 執筆・監修

社会保険労務士法人みらい

東京都社会保険労務士会 武蔵野支部所属。西東京市ひばりが丘を拠点に、労働・社会保険手続き、就業規則作成、給与計算、助成金申請、労務コンサルティングをワンストップで提供。みらいグループ(税理士法人みらいを中核とする専門家集団)と連携し、中小企業の人事労務をトータルサポートしています。

本記事は2026-05-17時点の法令・通達・施行規則に基づき作成しています。最新情報は厚生労働省、日本年金機構、ハローワーク等の公表資料をご確認ください。

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