パワーハラスメント防止措置は、2022年4月から中小企業にも義務化されました。しかし「窓口は作ったが、実際に相談が来たらどう動けばよいかわからない」という会社は少なくありません。この記事では、窓口の設置から相談対応までを実務に沿って解説します。
会社に義務付けられている措置
- 方針の明確化と周知・啓発:ハラスメントを行ってはならない旨を明確にする
- 相談窓口の設置:担当者を定め、労働者に周知する
- 迅速かつ適切な対応:事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止
- プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
3つのハラスメントと法的根拠
| 種類 | 根拠法 |
|---|---|
| パワーハラスメント | 労働施策総合推進法(2022年4月から中小企業も義務化) |
| セクシュアルハラスメント | 男女雇用機会均等法11条 |
| 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント | 男女雇用機会均等法11条の3、育児・介護休業法25条 |
パワハラの定義は、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの——この3要素をすべて満たすものとされています。
相談窓口の作り方
- 担当者を決める:複数名(できれば男女双方)を配置すると相談しやすくなります
- 受付方法を複数用意する:対面、電話、メール、書面など。匿名でも受け付けられるようにします
- 外部窓口の併用を検討する:社内では相談しにくいケースに備え、社労士事務所などの外部窓口を設ける方法もあります
- 周知する:就業規則への記載、掲示、社内メール、研修などで繰り返し伝えます
- 対応フローを文書化する:相談を受けてから解決までの流れを事前に定めておきます
窓口を設けても周知されていなければ設置していないのと同じです。従業員が「どこに相談すればよいか」を即答できる状態を目指してください。
相談を受けたときの対応手順
- 相談者から丁寧に聴き取る:事実関係を時系列で確認します。この段階で評価や判断を口にしないことが重要です
- 相談者の意向を確認する:どうしたいのか(環境改善、行為者への注意、正式な調査など)を確認します
- プライバシー保護を徹底する:情報を知る範囲を限定し、相談者の同意なく第三者に伝えないようにします
- 事実確認を行う:行為者、必要に応じて第三者から聴き取ります
- 措置を決定する:事実が確認された場合、就業規則に基づき懲戒処分や配置転換などを検討します
- 被害者への配慮措置:配置転換、メンタルヘルスケアなどを行います
- 再発防止策を実施する:研修、方針の再周知など
事実確認で気をつけること
- 先入観を持たない:どちらか一方の主張を前提に進めない
- 記録を残す:聴取した内容、日時、同席者を記録します
- 第三者への聴き取りは慎重に:噂が広がると二次被害につながります
- 行為者にも弁明の機会を与える:懲戒処分を行う場合の手続的要件でもあります
- ハラスメントに該当しない場合も、放置しない:業務上の指導であっても、伝え方に問題があれば改善を促します
なお、相談したことや事実確認に協力したことを理由に不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
放置した場合のリスク
- 安全配慮義務違反:労働契約法5条に基づき、損害賠償責任を問われる可能性があります
- 労災認定:精神障害の労災認定基準にハラスメントが明記されています
- 人材の流出:被害者だけでなく、周囲の従業員の離職にもつながります
- 企業イメージの低下:SNSや口コミサイトを通じて外部に広がることがあります
- 行政指導:措置義務違反として都道府県労働局から指導・勧告を受ける可能性があります
よくある質問(FAQ)
従業員が少なくても相談窓口は必要ですか?
必要です。パワハラ防止措置は企業規模を問わず、すべての事業主に義務付けられています。少人数の会社では、外部窓口を活用する方法も有効です。
相談窓口を外部に委託できますか?
可能です。当法人でも外部相談窓口としての対応を承っています。社内の人間関係から独立した窓口があることで、相談のハードルが下がる効果があります。
業務上の指導とパワハラの線引きが難しいのですが。
業務上必要かつ相当な範囲の指導はパワハラに該当しません。判断は、言動の目的・内容・態様、頻度、継続性などから総合的に行います。管理職向けの研修で具体例を共有することが有効です。
まとめ
ハラスメント対策は、制度を作ることと、実際に機能させることの間に大きな差がある分野です。当法人では、就業規則へのハラスメント関連規定の整備、相談窓口の設計、管理職向け研修、外部相談窓口としての受託まで対応しています。「窓口はあるが運用に自信がない」「実際に相談が来て困っている」といった場合は、お早めにご相談ください。