住民税の特別徴収は、会社が従業員の住民税を給与から天引きして納める制度です。所得税と違い前年の所得に対して課税されるため、退職・入社のタイミングで独特の処理が必要になります。
この記事の結論
- 原則は特別徴収:給与の支払者は特別徴収義務者として徴収・納入する義務がある(地方税法)
- 期間:6月から翌年5月までの12回で納める
- 所得税との違い:住民税は前年の所得に対する課税。年末調整のような精算はない
- 退職時:一括徴収・普通徴収への切替え・転職先への引継ぎの3通り
特別徴収は会社の義務
地方税法により、給与の支払をする者は特別徴収義務者として、従業員の住民税を給与から差し引いて 市区町村へ納入することとされています。従業員が希望するかどうかにかかわらず、原則として特別徴収です。
所得税との違いを整理しておきます。
| 所得税(源泉徴収) | 住民税(特別徴収) | |
|---|---|---|
| 対象 | その年の所得 | 前年の所得 |
| 税額の決定 | 会社が計算 | 市区町村が計算して通知 |
| 年末の精算 | 年末調整で精算 | 精算なし |
| 期間 | 1月〜12月 | 6月〜翌年5月 |
| 納期 | 原則翌月10日 | 翌月10日 |
会社が税額を計算する必要はありません。市区町村から届く特別徴収税額の決定通知書のとおりに控除します。
年間スケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1月31日まで | 給与支払報告書を、従業員の1月1日時点の住所地の市区町村へ提出する |
| 5月中 | 市区町村から特別徴収税額の決定通知書が届く。従業員用を本人へ配付する |
| 6月給与〜 | 新年度の税額で控除を開始する |
| 毎月10日 | 前月分を納入する |
最初の起点は1月31日の給与支払報告書です。これを提出しないと市区町村が税額を計算できません。年末調整の法定調書とあわせて処理します。
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なお、常時10人未満の給与支払者は、申請により年2回(6月・12月)にまとめて納入する納期の特例を受けられます。事務負担の軽減になります。
退職時の3つの選択肢
住民税は前年所得に対する課税のため、退職しても残りの税額が消えません。残額の扱いは退職時期によって変わります。
| 方法 | 内容 | 適用される場面 |
|---|---|---|
| ① 一括徴収 | 残額を最後の給与・退職金からまとめて控除する | 1月1日〜4月30日の退職は原則として一括徴収(本人の申出不要)。6月〜12月の退職でも本人が希望すれば可 |
| ② 普通徴収へ切替え | 本人が自分で納付書により納める | 6月〜12月の退職で、一括徴収を希望しない場合 |
| ③ 転職先へ引継ぎ | 転職先で特別徴収を継続する | 転職先が決まっており、本人が希望する場合 |
いずれの場合も、給与所得者異動届出書を退職日の翌月10日までに市区町村へ提出します。
とくに1月〜4月の退職は原則一括徴収である点は見落とされがちです。最後の給与から数か月分がまとめて引かれるため、手取りが大きく減ることを事前に説明してください。説明がないとトラブルになります。
入社時の手続き
中途入社者について特別徴収を始めるには、本人の状況を確認します。
- 前職で普通徴収に切り替わっている場合:本人が持っている納付書と、特別徴収切替届出(依頼)書を市区町村へ提出すると、未納分から特別徴収に切り替えられます
- 前職から引継ぎを受ける場合:前職が提出する給与所得者異動届出書に、転職先の情報が記載されます
- 新卒・前年に所得がない場合:前年所得がなければ住民税は発生しません。翌年6月から特別徴収が始まります
入社時に「住民税をどう納めているか」を確認する項目を、入社書類のチェックリストに入れておくと漏れがなくなります。
よくあるミス
- 給与支払報告書の提出漏れ:退職者分も提出が必要です(一定の要件あり)
- 異動届出書を出していない:退職者の分が会社に請求され続けます
- 1〜4月退職の一括徴収を忘れる:市区町村から指摘され、後から精算が必要になります
- 決定通知書を本人に渡していない:従業員用は本人へ配付する必要があります
- 住所変更を反映していない:課税する市区町村が変わります
- 6月に税額を更新し忘れる:前年度の税額のまま控除してしまう典型的なミスです
よくある質問(FAQ)
従業員が普通徴収を希望しています。認められますか?
原則として認められません。特別徴収は法令上の義務です。ただし、給与が少額で税額を引ききれない、給与の支払が不定期であるなど、市区町村が定める一定の事由に該当する場合に限り普通徴収が認められます。
退職金からも住民税を引くのですか?
退職所得に対する住民税は、他の所得と分離して計算し、退職金の支払時に特別徴収します。通常の給与から引く住民税(前年所得分)とは別の計算です。
住民税の納期の特例は使えますか?
常時10人未満の給与支払者であれば、申請により年2回(6月・12月)の納入とすることができます。毎月の納付事務が減るため、小規模な事業所では有効です。
まとめ
住民税の特別徴収は、仕組みを知っていれば難しくないが、知らないと必ずどこかで詰まる業務です。とくに1〜4月退職の一括徴収は、説明不足がそのままトラブルになります。当法人では、給与計算の代行とあわせて住民税の管理、異動届出書の作成、年末調整から給与支払報告書までの一連の処理をご支援しています。担当者の負担を減らしたい場合はご相談ください。