結論:年末調整の準備は10月に始め、11月中に申告書と証明書の回収を終えるのが目安です。12月に回収していると、給与計算と重なって間に合いません。令和8年分は基礎控除の引上げや扶養親族の所得要件の改正があり、11月までの源泉徴収は変わらず、12月の年末調整でまとめて精算します。
準備の要点
- 10月:保険料控除証明書が届き始める。案内と様式の配付を開始
- 11月:申告書と証明書を回収し、内容を点検する
- 12月:年税額を計算し、過不足を精算(12月または1月の給与)
- 1月:源泉徴収票の交付、法定調書合計表・給与支払報告書の提出(1月31日期限)
令和8年分(2026年)の年末調整で変わる点
令和8年分の年末調整では次の点が変わります。令和8年度税制改正による基礎控除の引上げ等は原則として2026年12月1日に施行され、11月までの毎月の源泉徴収には変更がなく、12月の年末調整で1年分を精算する形になります(国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」)。
- 基礎控除の引上げ:所得税法上の基礎控除が58万円から62万円になり、合計所得金額に応じた加算が見直されました
- 給与所得控除の最低保障額の引上げ:65万円から74万円に引き上げられました(令和8・9年分)
- 扶養親族等の所得要件の改正:扶養親族・同一生計配偶者の所得要件が合計所得金額58万円以下から62万円以下(給与収入だけなら123万円以下から136万円以下)になりました
- 23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例:一般生命保険料控除の適用限度額が4万円から6万円になる特例が設けられました(令和8・9年分)
実務で注意したいのは、改正で新たに扶養の要件を満たす親族がいる場合です。扶養控除等の適用を受けるには「扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要になるため、11月の回収時に、配偶者や子どもの今年の収入見込みを改めて確認してもらってください。
年末調整とは
年末調整は、毎月の給与から源泉徴収した所得税の合計額と、その年に納めるべき所得税額との差額を精算する手続きです。給与の支払者(会社)が行います。
対象となるのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人で、年末時点で在職している人が基本です。次の方は年末調整の対象外となり、確定申告が必要です。
- その年の給与収入が2,000万円を超える人
- 2か所以上から給与を受け、他社に扶養控除等申告書を提出している人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予等を受けている人
なお、住宅ローン控除の1年目や医療費控除、ふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)は年末調整では対応できず、本人の確定申告が必要です。この点を事前に案内しておくと、問い合わせが減ります。
スケジュール(10月から逆算)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 10月上旬 | 対象者リストの作成。申告書の様式を準備(電子化する場合はシステムの設定) |
| 10月中〜下旬 | 従業員へ案内と様式を配付。保険料控除証明書が届き始める時期です |
| 11月上旬 | 提出期限を設定(11月中旬〜下旬が一般的)。未提出者へ督促 |
| 11月中〜下旬 | 回収した申告書と証明書を点検。不備は本人へ差戻し |
| 12月 | 年税額を計算し、過不足を精算。12月または1月の給与で調整 |
| 翌1月31日まで | 源泉徴収票の交付、税務署へ法定調書合計表、市区町村へ給与支払報告書を提出 |
ポイントは提出期限を11月中に設定することです。12月に回収していると、給与計算と重なって確実に間に合いません。
従業員から回収する書類
申告書
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 ※翌年分もあわせて回収するのが一般的です
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書(2年目以降の対象者)
添付が必要な証明書
- 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書
- 小規模企業共済等掛金(iDeCoなど)の控除証明書
- 国民年金保険料の控除証明書(本人が納付した場合)
- 住宅ローンの年末残高等証明書
- 前職の源泉徴収票(年の途中で入社した人)
前職の源泉徴収票は回収漏れが起きやすい書類です。年の途中で入社した従業員には、早めに案内してください。
よくあるミス
- 前職分の給与を合算していない:中途入社者の源泉徴収票を確認します
- 扶養親族の状況変更を反映していない:出生、就職、死亡、収入の増減などを確認します
- 配偶者の所得見積額の誤り:見積りと実際が違うと再調整が必要になります
- 証明書の原本を確認せず申告額だけで処理している
- 通勤手当の非課税限度額を超えた分を課税していない
- 年の途中で扶養から外れたのに反映していない
誤りが判明した場合、翌年1月末までであれば会社で再調整できます。それ以降は本人の確定申告での対応になります。
社労士と税理士の役割の違い
年末調整に関する業務は、担当できる専門家が分かれています。
| 社会保険労務士 | 税理士 | |
|---|---|---|
| 給与計算 | 対応可能 | 対応可能 |
| 社会保険・雇用保険の手続き | 独占業務 | — |
| 年末調整の税額計算・法定調書の作成提出 | — | 独占業務 |
年末調整における税額計算や法定調書の作成・提出は税理士の業務です。社労士は、給与計算そのものと、扶養の異動に伴う社会保険の手続き(被扶養者異動届など)を担当します。
当法人は税理士法人みらいを中核とするみらいグループの一員です。給与計算と社会保険手続きを当法人が、年末調整の税務を税理士法人が担当することで、窓口を分けずに一体でご依頼いただけます。
よくある質問(FAQ)
年末調整の準備はいつから始めるべきですか?
10月中の案内配付、11月中の回収完了を目安にしてください。12月に入ってから回収を始めると、給与計算と重なって間に合わなくなります。
年末調整を電子化できますか?
できます。国税庁の年末調整控除申告書作成用ソフトや、給与システムの電子申告機能を利用すると、証明書のデータ取込みや検算が自動化され、担当者の負担が大きく減ります。導入は前年の秋までに検討してください。
年末調整だけを外部に頼めますか?
可能です。当法人では給与計算とあわせたご依頼を承っており、税務部分はグループの税理士法人が対応します。年1回で作業量が集中する業務のため、外部委託の効果が出やすい領域です。
まとめ
年末調整は、1年でもっとも担当者に負担が集中する業務です。10月から段取りを組めるかどうかで、12月の忙しさがまったく変わります。当法人では、給与計算・社会保険手続きの代行と、グループの税理士法人による税務対応を組み合わせ、年末調整まで一体でご支援しています。
こんなときは、ご相談ください
- 12月の給与計算と年末調整が重なり、担当者だけでは回りそうにない
- 中途入社や扶養の異動が多く、申告書の点検に手が回らない
- 来年から給与計算と年末調整をまとめて外部に任せたい
給与計算と社会保険手続きは当法人が、年末調整の税務はグループの税理士法人が担当します。顧問契約を結ばずに、必要な業務だけをスポットでご依頼いただくことも可能です。お見積りと初回のご相談は無料です。