退職の際の「自己都合」「会社都合」は、失業給付の受給時期や日数に大きく影響します。2025年4月から、自己都合退職の給付制限が原則1か月に短縮されました。会社側の記載が争いになることも多い論点です。
この記事の結論
- 給付制限の短縮:2025年4月1日以降の離職は、正当な理由のない自己都合退職でも原則1か月(従来は2か月)
- 例外:5年間に2回以上の自己都合離職は3か月、重責解雇も3か月
- 教育訓練:2025年4月以降、一定の教育訓練を受ける場合は給付制限が解除される
- 会社都合:特定受給資格者として、給付制限なし・所定給付日数も手厚くなる
自己都合と会社都合で何が変わるか
| 自己都合(一般の離職者) | 会社都合(特定受給資格者) | |
|---|---|---|
| 給付制限 | 原則1か月(2025年4月1日以降の離職) | なし |
| 受給に必要な被保険者期間 | 離職前2年間に通算12か月以上 | 離職前1年間に通算6か月以上 |
| 所定給付日数 | 被保険者期間に応じて90〜150日 | 年齢と被保険者期間に応じて最大330日 |
| 国民健康保険料 | 通常どおり | 軽減措置の対象となる場合がある |
本人にとっては受給開始時期と総額の両方が変わるため、離職理由をめぐって会社と争いになることがあります。
2025年4月からの給付制限の短縮
雇用保険法の改正により、2025年4月1日以降に離職した方は、正当な理由がない自己都合退職の場合の給付制限期間が原則1か月となりました。従来は原則2か月でした。
ただし、次の場合は3か月のままです。
- 離職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格の決定を受けている場合
- 自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された場合(重責解雇)
あわせて、2025年4月以降に教育訓練等を受ける場合には給付制限が解除され、基本手当を受給できるようになりました。学び直しを後押しする趣旨の改正です。
会社都合(特定受給資格者)に該当する主なケース
特定受給資格者は、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた方です。主な例は次のとおりです。
- 倒産・事業所の廃止による離職
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)
- 労働条件が採用時に示された内容と著しく相違したことによる離職
- 賃金の未払い(一定額以上)や大幅な賃金低下
- 過度の時間外労働(一定時間を超える月が続いた場合など)
- 上司・同僚等からのハラスメントを受けたことによる離職
- 退職勧奨を受けたことによる離職
重要なのは、退職勧奨に応じた退職は会社都合として扱われるという点です。「合意退職だから自己都合」と処理するのは誤りです。
また、これらに準じる事情がある場合は特定理由離職者として、給付制限が課されないなどの扱いを受けられることがあります(期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合、健康上の理由、家庭の事情など)。
離職票の記載と、争いになったときの流れ
離職理由は、事業主が離職証明書(離職票)に記載します。手続きの流れは次のとおりです。
- 事業主が離職証明書に離職理由を記載し、判断の根拠となる資料を添えてハローワークへ提出します
- 離職者本人が記載内容を確認し、異議の有無を記入して署名します
- 本人が離職票を持参してハローワークで手続きします。異議がある場合は申し出ることができます
- 最終的な離職理由はハローワークが判断します。会社の記載がそのまま確定するわけではありません
実態と異なる離職理由を記載すると、虚偽の記載として問題になります。助成金の受給要件に影響することもあるため(事業主都合の離職があると受給できない助成金があります)、記載の判断は慎重に行ってください。
会社が備えておくべきこと
- 退職の申出は書面で受ける:退職届の有無と記載内容が、後の判断材料になります
- 退職勧奨は記録を残す:勧奨の事実があれば会社都合になります。曖昧にせず、経緯を文書化します
- 労働時間の記録を整える:過度の時間外労働を理由とする離職の判断で確認されます
- ハラスメント相談の記録を残す:相談があった場合の対応経過が問われます
- 助成金への影響を確認する:事業主都合の離職があると、一定期間受給できない助成金があります
「会社都合にすると助成金が使えなくなる」という理由で実態と異なる記載をすることは避けてください。後に是正を求められるだけでなく、不正受給と評価されるリスクがあります。
よくある質問(FAQ)
退職勧奨に応じた場合は自己都合ですか、会社都合ですか?
会社都合(特定受給資格者)として扱われます。本人が退職届を出していても、実質的に会社からの働きかけによる退職であれば会社都合です。
離職理由に本人が異議を申し立てたらどうなりますか?
ハローワークが双方の主張と資料をもとに判断します。会社側は、労働時間の記録、退職の申出書、面談記録などの客観的資料を提示できるよう備えておいてください。
会社都合にすると助成金に影響しますか?
事業主都合の離職があると、一定期間受給できなくなる助成金があります。ただし、それを理由に実態と異なる記載をすることはできません。助成金の活用予定がある場合は、離職が生じる前にご相談ください。
まとめ
離職理由の判断は、従業員の生活と会社の助成金活用の両方に影響するデリケートな論点です。とくに退職勧奨が絡む場合は、記録の残し方で後の評価が変わります。当法人では、離職票の作成、退職手続きの代行、退職勧奨の進め方のご助言までご支援しています。判断に迷われた場合は、提出前にご相談ください。