労働者名簿は、労働基準法第107条によりすべての事業場に作成が義務付けられた法定帳簿です。賃金台帳・出勤簿と合わせて「法定三帳簿」と呼ばれ、労働基準監督署の調査で必ず確認されます。この記事では、記載事項と保存期間を実務に沿って解説します。
この記事の結論
- 根拠:労働基準法第107条(作成義務)、労働基準法施行規則第53条(記載事項)
- 対象:各事業場ごとに、労働者各人について作成する
- 保存期間:5年(労基法109条/附則143条の経過措置により当分の間3年)
- 起算日:労働者の死亡・退職・解雇の日から起算する
労働者名簿の作成義務
労働基準法第107条は、使用者に対し、事業場ごとに労働者名簿を調製し、労働者の氏名・生年月日・履歴その他の事項を記入することを義務付けています。
ポイントは次の3点です。
- 事業場ごとに作成する:本社で一括ではなく、支店・営業所など事業場単位で備え付けます
- 労働者ごとに作成する:一覧表ではなく、労働者各人について記載します
- 日雇労働者は対象外:法107条は日々雇い入れられる者を除いています
パート・アルバイト・有期雇用の労働者も対象です。「正社員だけ作っている」という状態は法違反になります。
記載事項(労働基準法施行規則第53条)
労働者名簿に記載すべき事項は、労働基準法施行規則第53条に定められています。
| 記載事項 | 補足 |
|---|---|
| 氏名 | — |
| 生年月日 | — |
| 履歴 | 社内の異動歴・職歴など。記載範囲は事業場の判断による |
| 性別 | — |
| 住所 | 変更があれば遅滞なく訂正する |
| 従事する業務の種類 | 常時30人未満の事業場では記入不要 |
| 雇入れの年月日 | — |
| 退職の年月日およびその事由 | 退職事由が解雇の場合はその理由も記載する |
| 死亡の年月日およびその原因 | — |
記載事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければなりません。住所変更の届出ルールを社内で定めておくと運用が安定します。
なお、マイナンバーは労働者名簿の法定記載事項ではありません。番号法上の安全管理措置が必要になるため、名簿とは別に管理するのが実務上は無難です。
保存期間は5年(当分の間3年)
労働者名簿の保存義務は労働基準法第109条に定められています。2020年4月の改正で保存期間は5年となりましたが、附則第143条の経過措置により当分の間は3年とされています。
起算日は、労働者の死亡・退職・解雇の日です。在職中はもちろん、退職後もこの期間は保存が必要です。
法定三帳簿の保存期間(いずれも5年/当分の間3年)
- 労働者名簿:死亡・退職・解雇の日から起算
- 賃金台帳:最後の記入をした日から起算
- 出勤簿等:完結の日から起算
様式と電子保存
労働者名簿には様式第19号(労働基準法施行規則第53条関係)が定められていますが、必要な記載事項を満たしていれば、独自の様式でも差し支えありません。
パソコンでの作成・保存も認められています。ただし、次の条件を満たす必要があります。
- 法定の記載事項がすべて記録されていること
- 労働基準監督官の臨検時などに、直ちに必要事項が明らかにされ、写しを提出できること
- 誤って消去されない措置、改ざん防止の措置が講じられていること
クラウド型の人事労務システムを使う場合も、この要件を満たしているかを確認してください。
違反した場合の罰則
労働者名簿の作成・記載・保存を怠った場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金の対象となります。
実務上は、いきなり罰則が科されるより、労働基準監督署の調査で是正勧告を受けるケースがほとんどです。ただし、法定三帳簿が整っていないと「労務管理全体がずさん」という心証を与え、他の項目も詳しく調べられる原因になります。
また、労働者名簿は助成金の申請でも提出を求められることが多く、整備されていないと申請そのものができません。
よくある質問(FAQ)
パート・アルバイトも労働者名簿が必要ですか?
必要です。日々雇い入れられる日雇労働者を除き、雇用形態にかかわらず作成義務があります。パート・アルバイト・有期雇用の方も対象です。
本社でまとめて管理してもよいですか?
労働者名簿は事業場ごとに調製する必要があります。データを本社で一元管理する場合でも、各事業場で直ちに必要事項を確認・出力できる状態にしておく必要があります。
退職者の名簿はいつ廃棄できますか?
退職・解雇・死亡の日から5年(当分の間3年)を経過した後です。個人情報を含むため、保存期間経過後は適切に廃棄してください。
まとめ
労働者名簿は、作ること自体は難しくありませんが、記載漏れ・更新漏れ・保存漏れが起きやすい帳簿です。当法人では、法定三帳簿の整備状況の点検から、労務管理体制の構築までご支援しています。「調査に備えて一度確認しておきたい」「様式が古いままかもしれない」といった段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。