障害者雇用率制度の概要
障害者雇用率制度は、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」第43条に基づき、事業主に対して、その雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合が一定率(法定雇用率)以上となるよう義務づける制度です。共生社会の実現と障害者の職業的自立を支える根幹的な仕組みとして位置づけられています。
2023年1月の労働政策審議会障害者雇用分科会の議論を経て、民間企業の法定雇用率は段階的に引き上げられることとなりました。事業主の規模要件も併せて拡大されるため、これまで対象外だった中小企業にも新たに義務が及ぶケースが増えています。
法定雇用率と対象事業主規模の段階的引上げ
- 令和5年度中:2.3%(対象事業主:常用労働者43.5人以上)
- 2024年4月から:2.5%(対象事業主:常用労働者40.0人以上)
- 2026年7月から:2.7%(対象事業主:常用労働者37.5人以上)
- 国・地方公共団体・特殊法人等の法定雇用率:3.0%(2026年7月から3.0%)
- 都道府県等の教育委員会の法定雇用率:2.9%(2026年7月から)
障害者雇用納付金制度
障害者を雇用するためには、施設・設備の整備や特別な雇用管理など、一般的に経済的負担が伴います。この負担を雇用する事業主と雇用しない事業主との間で調整するため、障害者雇用促進法に基づき「障害者雇用納付金制度」が設けられています。制度の運営は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が担っています。
納付金(不足する場合)
常時雇用労働者数が100人を超える事業主で、法定雇用率を達成していない場合、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付する義務があります。納付金は罰金や制裁金ではなく、雇用環境整備の社会的コストを分担するための拠出金です。
調整金(超過達成の場合)
常時雇用労働者数が100人を超える事業主で、法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合、超過1人につき月額29,000円の障害者雇用調整金が支給されます(事業主の申請に基づく)。
報奨金(100人以下の事業主向け)
常時雇用労働者数が100人以下の事業主が、一定数を超えて障害者を雇用している場合は、超過1人につき月額21,000円の報奨金が支給されます。
未達成時の行政指導
法定雇用率を著しく下回る事業主に対しては、ハローワーク所長から「障害者の雇入れに関する計画」の作成命令が出されます。さらに以下のステップで指導が行われます。
- 計画作成命令(2年計画が一般的)
- 計画の実施が不十分な場合、「適正実施勧告」
- 勧告にも従わない場合、厚生労働大臣による企業名公表
- 特に状況が悪い企業には、計画終了後に9ヶ月間の「特別指導」
企業名が公表されればレピュテーションへの影響は避けられず、取引先や採用市場における信頼低下にも直結します。
企業の実務対応のポイント
- 毎年6月1日現在の障害者雇用状況の報告(障害者雇用状況報告書、いわゆる「ロクイチ報告」)の正確な作成
- 障害者求人の計画的な開拓と職場環境の整備(合理的配慮の提供)
- 除外率制度の正しい理解と適用
- 特例子会社の活用検討
- ジョブコーチや助成金(特定求職者雇用開発助成金等)の積極活用
まとめ
2026年7月の法定雇用率2.7%への引上げに伴い、対象事業主の範囲は常用労働者37.5人以上へ拡大されます。これまで対象外だった企業も新たに法定雇用義務を負うことになり、計画的な準備が不可欠です。納付金の負担回避だけでなく、多様な人材が活躍できる職場づくりは、企業価値向上にも直結します。
当法人では、法定雇用率の試算、雇入れ計画の策定、ハローワーク・JEEDへの各種届出、合理的配慮に関する社内ルール整備まで一貫してサポートいたします。お気軽にご相談ください。