出勤簿は、労働者名簿・賃金台帳と並ぶ法定三帳簿のひとつです。労働基準監督署の調査では必ず確認され、整っていないと是正勧告の対象になります。この記事では、記載すべき項目と作り方を実務に沿って解説します。
この記事の結論
- 根拠:労働基準法第109条(記録の保存)、労働時間適正把握ガイドライン
- 記載項目:氏名・出勤日・始業終業時刻・休憩時間・労働時間数・時間外/休日/深夜労働の時間数
- 保存期間:5年(附則により当分の間3年)/完結の日から起算
- 様式は自由:タイムカード・エクセル・勤怠システムでも可。客観的な記録であることが要件
出勤簿は「法定三帳簿」のひとつ
労働基準法は、使用者に対し労働者名簿(法107条)と賃金台帳(法108条)の作成を明文で義務付けています。出勤簿はこの2つと異なり「出勤簿を作れ」という条文があるわけではありませんが、
- 労働基準法第109条が「その他労働関係に関する重要な書類」の保存を義務付けていること
- 賃金台帳に労働日数・労働時間数・時間外労働時間数の記載が必要(労基則54条)であり、その根拠資料が要ること
- 労働時間の適正な把握が使用者の義務とされていること
という3点から、実務上は作成・保存が必須とされ、法定三帳簿と呼ばれています。
関連記事:労働者名簿の記載事項と保存期間/賃金台帳の書き方とテンプレート
出勤簿に記載すべき項目
| 項目 | 補足 |
|---|---|
| 氏名 | — |
| 出勤日 | 日ごとに記録する |
| 始業時刻・終業時刻 | 「出勤」「欠勤」だけでは不足。時刻の記録が必要 |
| 休憩時間 | 取得した時間。労基法34条の付与義務の確認に使う |
| 労働時間数 | 日ごと・月ごとの合計 |
| 時間外労働の時間数 | 36協定の上限管理に必要 |
| 休日労働の時間数 | 法定休日と所定休日を区別して記録すると割増率の判断が明確になる |
| 深夜労働の時間数 | 22時〜翌5時 |
よくある不備が「○」「/」だけの出勤簿です。出勤したかどうかしか分からない記録では、労働時間を把握したことになりません。始業・終業の時刻を必ず残してください。
記録は「客観的な方法」で
労働時間の適正な把握のためのガイドラインは、使用者が労働時間を把握する方法として、原則として次のいずれかによることを求めています。
- 使用者が自ら現認して記録する
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など客観的な記録を基礎とする
やむを得ず自己申告制による場合は、十分な説明を行う、申告時間と実際の在社時間に乖離がないか実態調査を行う、申告を阻害する措置を設けない、といった対応が必要です。
「本人が手書きで書いた出勤簿しかない」という状態は、調査で指摘を受けやすい形です。
保存期間と起算日
労働基準法第109条により保存期間は5年ですが、附則第143条の経過措置により当分の間3年とされています。起算日は完結の日(最後に記入した日)です。
法定三帳簿の保存期間(いずれも5年/当分の間3年)
- 労働者名簿:死亡・退職・解雇の日から起算
- 賃金台帳:最後の記入をした日から起算
- 出勤簿等:完結の日から起算
未払い残業代の請求権の消滅時効も当分の間3年です。請求を受けたときに反証できる記録がないと、相手方の主張する労働時間を前提に計算されるおそれがあります。保存は会社を守るための備えでもあります。
エクセルで作る場合の注意点
様式は法令で定められていないため、エクセルでの作成も認められます。ただし次の点に注意してください。
- 1分単位で集計する:15分単位の切捨てなどは認められません
- 改ざんできない運用にする:上長の承認欄を設ける、確定後は編集権限を制限するなど
- 客観的記録と突き合わせる:入退館記録やPCログと大きく乖離していないか確認する
- 直行直帰・テレワークのルールを決める:始業終業の報告方法をあらかじめ定めます
- 打刻漏れの訂正手順を残す:誰がいつ訂正したかが分かる形にします
関連記事:勤怠管理のルール整備/労働時間の適正把握ガイドライン
よくある質問(FAQ)
タイムカードがあれば出勤簿は不要ですか?
タイムカードそのものを出勤簿として扱うことは可能です。ただし、休憩時間や時間外・深夜労働の時間数など、必要な事項が記録・集計されている必要があります。打刻だけで集計がない状態では不十分です。
管理監督者の出勤簿も必要ですか?
必要です。管理監督者は労働時間・休憩・休日の規定が適用除外ですが、労働安全衛生法第66条の8の3により労働時間の状況の把握義務があります。深夜割増賃金の計算にも記録が要ります。
テレワークの労働時間はどう記録しますか?
始業・終業の報告方法をあらかじめ定め、客観的な記録(PCのログオン・ログオフ記録、勤怠システムの打刻)を基礎とするのが原則です。中抜け時間の取扱いもルール化しておくとトラブルを防げます。
まとめ
出勤簿は、「あるかどうか」ではなく「労働時間を客観的に説明できるか」で評価されます。形式を整えただけでは、調査でも未払い残業代の請求でも会社を守れません。当法人では、法定三帳簿の整備状況の点検、勤怠管理の運用設計、給与計算との連動までご支援しています。一度点検しておきたいという段階でもご相談ください。