結論:過半数代表者は、①労働基準法41条2号の管理監督者でない人から、②協定などを結ぶ代表者を選ぶと明らかにしたうえで、投票・挙手などの民主的な手続で選び、③会社の意向に基づいて選ばれた人であってはなりません(労働基準法施行規則6条の2第1項)。会社が指名した人や親睦会の幹事を自動的に代表にした場合、その人と結んだ36協定は無効になります。
過半数代表者の要件の早見表
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 立場 | 管理監督者(労基法41条2号)でないこと | 労基則6条の2第1項1号 |
| 選び方 | 協定等をする者の選出と目的を明らかにして、投票・挙手等で選ぶ | 労基則6条の2第1項2号 |
| 「等」の意味 | 話し合い・持ち回り決議など、過半数の支持が明確になる民主的な手続 | 平11.3.31 基発169号 |
| 会社の関与 | 使用者の意向に基づき選ばれた者でないこと | 労基則6条の2第1項2号 |
| 母数 | 正社員だけでなくパート・アルバイトを含む事業場のすべての労働者 | 厚生労働省 |
| 不利益取扱い | 代表者であること・なろうとしたこと・正当な行為を理由とする不利益取扱いをしない | 労基則6条の2第3項 |
| 事務への配慮 | 協定等の事務を円滑に行えるよう必要な配慮をする | 労基則6条の2第4項 |
過半数代表者とは
過半数代表者とは、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合に、労働者の過半数を代表して会社と労使協定を結んだり、意見を述べたりする人です。36協定(労基法36条1項)、一斉休憩の除外協定(34条2項)、年次有給休暇の計画的付与(39条6項)、変形労働時間制、賃金からの控除(24条1項)、就業規則の意見聴取(90条1項)など、多くの手続きで必要になります(労基則6条の2第1項に列挙)。
過半数組合がある事業場では、その組合が協定の相手方になります。労使協定の種類は労使協定の種類と手続きで一覧にしています。
要件1:管理監督者でないこと
過半数代表者は、労基法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)であってはなりません(労基則6条の2第1項1号)。管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人をいい、部長や工場長などが典型です。
なお、事業場に管理監督者しかいない場合は、就業規則の意見聴取(90条1項)、賃金控除協定(24条1項)、計画的付与(39条6項)など一部の手続きについては、要件2を満たせば代表者になれます(労基則6条の2第2項)。36協定は、この例外に含まれていません。肩書きと実態の関係は管理監督者の範囲で解説しています。
要件2:目的を明らかにした民主的な手続で選ぶ
過半数代表者は、「何の協定を結ぶ代表者を選ぶのか」を明らかにしたうえで、投票・挙手などの方法で選ばなければなりません(労基則6条の2第1項2号)。行政解釈は、「投票、挙手等」の「等」には、労働者の話し合いや持ち回り決議など、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な手続が含まれるとしています(平11.3.31 基発169号)。
手続には、正社員だけでなくパートやアルバイトを含むすべての労働者が参加できるようにする必要があり、代表者は事業場のすべての労働者の過半数を代表していなければなりません(厚生労働省)。最高裁は、親睦会の代表者を36協定の労働者代表とした事案で、適法に選出された代表者とはいえないと判断しています(トーコロ事件・最二小判平13.6.22)。
要件3:会社の意向で選ばない
過半数代表者は、使用者の意向に基づいて選出された人であってはなりません(労基則6条の2第1項2号、2019年4月施行)。厚生労働省は、会社の代表者が特定の労働者を指名するなど、使用者の意向で選ばれた場合、その36協定は無効になると説明しています。
「総務課長に頼んでおいた」「前回と同じ人に署名してもらった」という運用は、この要件を満たしません。36協定が無効になると、時間外・休日労働をさせること自体が違法になります。36協定の手続きは36協定届の書き方と提出をご覧ください。
選出後に会社が守ること
会社は、選ばれた代表者を不利益に扱ってはならず、代表者が事務を円滑に行えるよう配慮しなければなりません。
- 不利益取扱いの禁止:過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由に、不利益な取扱いをしないようにしなければなりません(労基則6条の2第3項)。たとえば協定案に反対意見を述べたことを理由に評価を下げることは、これに当たるおそれがあります。
- 必要な配慮:協定などの事務を円滑に行えるよう、必要な配慮を行わなければなりません(同条4項)。厚生労働省は、意見集約のための事務機器(イントラネットや社内メールを含む)や事務スペースの提供を例に挙げています。
よくある質問(FAQ)
社長が「この人にお願いしたい」と候補者を決めるのは問題ですか?
会社が指名した場合や、会社の意向で選ばれた場合は、要件を満たしません(労基則6条の2第1項2号)。候補者は労働者の側から出し、労働者の投票・挙手などで選んでください。
パートやアルバイトも選出手続に参加させる必要がありますか?
必要です。厚生労働省は、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めたすべての労働者が手続に参加できるようにする必要があるとしています。正社員だけで選んだ代表者は、事業場の労働者の過半数を代表しているとはいえない場合があります。
選出の記録は残すべきですか?
選出の目的・方法・日付・結果(賛成者数など)を書面に残しておくと、労働基準監督署の調査や協定の有効性が問題になったときに、適法に選んだことを説明しやすくなります。調査への備えは労働基準監督署の調査対応でも解説しています。
まとめ
過半数代表者の選出は「管理監督者以外から」「目的を示して」「パートを含む全員参加の民主的な手続で」「会社の意向を入れずに」の4点が基本です。選出が適法でないと、36協定をはじめ、その代表者と結んだ協定の効力そのものが問われます。毎年同じ人に署名だけ頼んでいる会社は、次の協定の更新前に選出方法を見直してください。
こんなときは、ご相談ください
- 36協定の更新が近いが、代表者を毎年会社側が決めていて、選び方を改めたい
- 支店・店舗ごとに代表者を選ぶ必要があり、パートやシフト勤務の人が多く投票の進め方がわからない
- 労働基準監督署の調査で、過半数代表者の選出方法について説明を求められた
当法人では、選出の手順づくりと案内文・記録書式の作成、労使協定書の作成をお手伝いします。顧問契約を結ばずに、必要な業務だけをスポットでご依頼いただくことも可能です。お見積りと初回のご相談は無料です。